最近、「整える」という言葉を、もう少し深く言葉にしてみたいと思うようになりました。
これまでnoteで綴ってきた整えことばは、心に寄り添う“手紙”のような存在でしたが、これからはそこに少し現実と理論を重ねながら、なぜそう感じるのか、どうすれば変わっていけるのかを丁寧に掘り下げていきます。
今回のテーマは「物欲」。買っても買っても満たされない時、心の奥ではどんなことが起きているのでしょうか。一緒に見つめていきましょう。
「欲しい」のに、苦しくなる理由
欲しいものを手に入れたはずなのに、すぐに次の“欲しい”が生まれる。届いた瞬間はうれしいのに、心のどこかがまだ満たされない。SNSでは誰かの暮らしや持ち物が流れ込み、「自分もあんなふうになりたい」と思う。
けれど“欲しい”の正体をたどると、本当に求めていたのはモノそのものではなく、安心・承認・満足感など、心の奥の感情であることが少なくありません。
物欲は、脳の“報酬回路”のいたずら
私たちの脳には快感を感じる「報酬回路」があり、買い物をするとドーパミンという物質が分泌されます。ドーパミンは“幸せのホルモン”というよりも、「手に入るかもしれない」という期待を高めるホルモン。
だから、手に入れた瞬間よりも“探している時間”“カートに入れている瞬間”のほうがワクワクしやすく、それが続くことで脳は「もっと欲しい」と錯覚し、気づけば“物欲のループ”に巻き込まれてしまいます。
「買う」ことで埋めようとしているもの
モノを買うことで一瞬満たされたように感じるのは、心の奥に“欠けた部分”があるからです。
- 頑張っている自分をねぎらいたい
- 愛されたい、認められたい
- 不安をまぎらわせたい
- 退屈を埋めたい
その気持ちを“買う”という行為で満たそうとすると、根本は解消されないままなので、また次の欲が湧いてきます。物欲が止まらない時、それは「自分の感情を見失っているサイン」かもしれません。
物欲を静かに整える3つの方法
① SNSと広告から距離を置く
情報を遮断すると、脳の興奮が自然と鎮まります。1日でも半日でもいいので「見ない時間」をつくることが効果的です。心が落ち着き、ほんとうに必要なものが見えてくるようになります。
② 「これは何を満たしたい気持ち?」と問いかける
衝動買いしそうな瞬間に、数秒だけ立ち止まってみましょう。その“欲しい”の奥にある気持ちを言葉にすることで、衝動は驚くほどやわらぎます。
③ 今あるものを丁寧に使い切る
新しいものを足す前に、すでに持っているものを使う・使い切る・整える。磨く、修理するなどの行為が「もう足りている」という感覚を育て、心の満足度が自然に高まります。
「足りない」より、「すでにある」へ
ほしい気持ちは悪いことではありません。
ただ、“足りない”と感じている時は、自分の中の豊かさを一時的に見失っているだけのこともあります。「これがなくても、私は大丈夫」。そう思えた時、外側に向かっていたエネルギーは、自然と内側に戻っていきます。
「足りない」と感じた時、それでも“今ここにある”豊かさを見つめてみよう。その気づきが、あなたの心をそっと整えてくれます。

